女性が多く、夜勤がない民間企業で、病棟勤務の経験を活かしてみませんか?

医師や製薬会社との連携が重要

看護師の活躍が求められるフィールドが拡大するなか、病院やクリニックでの経験を生かして、民間企業へ転職する方が増えてきています。

その転職先として特に人気が高いのが、新薬の安全性や有効性を調べる臨床試験に関する業務を製薬会社から委託される治験関連企業です。

多くの患者さんが待ち望んでいる新薬の開発に携わるという社会的貢献度の高いお仕事ですので、病院勤務とはまた違った「やりがい」を感じることができます。

また、他の業種の企業に比べて、治験関連企業が特に注目されている理由として以下の3つのポイントが挙げられます。

看護師として身に付けた知識やスキルを活かすことができる

看護師の皆さんが治験関連企業で働くことを考えた場合、代表的なお仕事は次の二つとなります。まず、患者さんに治験のメリットやデメリットを説明し、スケジュールの調整やデータ収集を行うCRC(治験コーディネーター)、そして治験を実施する医療機関や担当医師を訪問して、治験の計画が適正に行われいるかの管理を行うCRA(臨床開発モニター)です。

いずれのお仕事も薬剤や疾患などの専門知識は勿論、医師や患者(被験者)、医療機関との円滑なコミュニケーションスキルが求められますので、病院勤務の経験がある看護師の方の適性は特に高く、優遇される傾向にあります。実際、治験業界への転職組の約40%は看護師となっています。

社員の半数以上は女性、週休二日、夜勤なし、研修が充実

多くの企業が日勤帯のみの、土・日がお休みの勤務体制となっていますので、小さいお子さんがいらっしゃる方でも、家庭と仕事の両立が可能です。社員の過半数は女性という企業が多いので、産前・産後休暇や育児休暇などの福利厚生が充実しているなど、結婚後も長く働き続けることができる環境が整備されています。

また、未経験者でも安心して勤務できるように、転職組の方でも新卒採用と同様に、入社時の導入研修、実地研修、その後の継続研修などのプログラムがしっかりと用意されています。

業界の成長が著しく、積極採用の企業が急増中

新薬開発の競争激化と経営効率化のため、多くの製薬会社は治験関連の業務をCRC(治験コーディネーター)やCRA(臨床開発モニター)が働く医薬品開発支援企業に委託をしています。

この業界が急成長している背景には、日本の医薬品市場への参入が相次ぐ外資系の製薬会社の治験関連業務の外部委託率が、日本の製薬会社よりも高いことにあります。そのため、外資系の製薬会社の国内シェアが伸びるに比例して、治験関連業務の外部委託が増え、その結果、CRCやCRAなどのニーズも高まるというわけなのです。

近年は多くの治験関連企業が、看護師、薬剤師、臨床検査技師などの医療従業者としてバックグラウンドを持つ方を積極採用しています。この業界に興味のある方は今がチャンスといえるでしょう。

求人の募集は、製薬企業や治験を実施する機関(大学病院等の大規模施設)との距離が近いことが求められるため、首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)や大阪、兵庫(神戸)、名古屋、福岡などの都市圏に集中する傾向があります。

看護師時代に培ったケアの視点で被験者に正しい情報提供を心掛けています

被験者の倫理的配慮を最優先

看護師としてのキャリアのスタートは企業系病院のICU(集中治療室勤務)でした。その後、地元の大学院で薬理研究をする傍ら、同大学の附属病院に勤務しました。3年前に現在の病院(病床数1,000以上)に入職し、翌年から治験コーディネーター(CRC)業務を開始しました。

治験は製薬会社と病院との契約で行われますので、病院全体で取り組む必要があります。正確に治験を行い、質の高いデータを提供することは、新薬を待つ患者さんのためになると同時に、病院の評価にもつながります。

現在の病院では1年間で約60前後の治験が行われています(被験者総数約220例)。プロトコルによって期間は様々ですから、多いときは1ヶ月に20名以上の被験者を受け持つこともあります。

治験は、多くの施設で異なる背景の人々を対象に実施されます。その科学性・信頼性・倫理性を保つためには、プロトコルに従って進めることが必須となります。例えば、被験者には一般の診察時よりも来院日をしっかりと守り、決められたとおりに検査を受け、服薬することが求められます。そのためCRCは、どういう方法を用いればプロトコルを理解し、指示に従ってもらえるかどうか、それぞれが考え、創意工夫します。

CRCの役割は、被験者および病院スタッフが正確に治験に取り組めるように調整することです。まず、被験者が治験予定を理解できるように、それぞれの状況に応じてスケジュール表の作成・配布を行います。また、間違いなく確実に服薬してもらうために、各被験者に合わせて服薬日誌を作成・配布したり、薬のシートに工夫をします。さらに、電話連絡を密に行い、服薬状況や体調の確認などを行っています。

一方、病院スタッフに対しては、医師向けの治験講習会や看護師に向けた治験セミナーなどを企画・実施するほか、テキスト作成や病院のホームページに掲載する治験の記事を書くなど、啓発・教育活動も行います。

インターネットの普及により、治験参加募集などの広告に触れる機会も大幅に増した結果、治験を知る人も増えました。患者さんの姿勢が前向きでなければ失敗するケースも多いので、積極的に参加したいと思う人が増えたことは、新薬の開発には何よりの朗報です。

治験にかかわる医師やCRCは、患者さんが治療を選択する際の選択肢の一つとして、治験を検討できるように、患者さんへ正しく情報提供をしていく必要があります。治験を成功に導くためには、このインフォームド・コンセントが正確に行われているかが、極めて重要となります。

CRCのお仕事をしていて、報われると思うときは被験者の方から、「お蔭様で、安心して治験を受けることができました。また機会があれば参加してみたいです。」「服用した尿失禁治療薬のおかげで、10年ぶりに夜ぐっすりと眠ることができました。」といった喜びの声や手紙をもらったときです。治験に参加するまでは、患者さん側の気持ちの面でハードル(不安、実験台という誤解)が高いものの、一度参加すると、「また参加してみたい」と言われることが多いです。

診察の待ち時間を利用して被験者の話にゆっくりと耳を傾けるように心掛けています。また、来院のたびに、薬や検査、検査結果のことなど、時間をかけて被験者が理解・納得するまでじっくり説明を行います。被験者の家にも、「体調はお変わりないですか」と電話したり、来院日時の確認をしたりと、在宅中にコンタクトを取る機会も多いです。

このようなやり取りを密に行うことは、被験者・家族にとって「病気や薬に対する不安や疑問点をしっかり聴いてくれて大事にしてもらっている」という思いにつながり、その結果、「また治験に参加したい」という気持ちを生み出しているのではないでしょうか。

現在、クリニックでも治験ができるようになり、病院では重症患者、すなわち入院患者を対象とした治験が増えてきています。ここでも看護の視点は欠かせません。治験を理解し、看護のプロの目で24時間しっかり観察、ケアを行うことが、質の高い治験と被験者の擁護につながると思います。

治験は新薬を製造販売するための承認申請に必要なプロセスです

製薬企業の開発費は莫大

私たちは病気になると、病院に行って、処方された薬を飲んだり塗ったりして病気を治しますが、これらの薬は一朝一夕に誕生したわけではありません。薬の開発には、多くの時間と労力とお金がかかります。

厚生労働白書によると、1つの医薬品が生まれるまでには10年以上もの歳月と、200〜300億円の費用がかかると報告されています。しかも、基礎研究で選別された新薬の候補物質が、実際に市場に出る確率は1万分の1だといわれ、製薬会社の基礎研究社員が新薬を開発し市場に出せるのは、一生に一度あるかないかというレベルです。

特に近年は、世界規模での開発競争が激化していることや、日本の新薬承認の基準が厳しくなったことで、新薬を市場に出すことは大変困難になっています。

具体的なプロセスとしては、まず動物で薬としての効果の有無を調べる「スクリーニング」の段階で、かなりの候補物質がふるい落とされます。ここで残ったものが次の「非臨床試験」に進みます。

非臨床試験とは、人ではなく動物で、薬の候補の性質を調べる検査のことで、吸収から排泄までの体内での動きや体への影響、効果の出る量や使い方など薬効の研究、毒性、胎児や遺伝子への影響など安全性に関する試験が行なわれます。

この段階をクリアした薬の候補は、人における安全性や有効性を調べる臨床試験の対象となりますが、これを「治験」といい、厚生労働省から新しい薬を製造販売するための承認申請する際に必ず必要となります。

治験は第T・U・V相の3つのフェーズから成り、これらの試験で安全性、有効性、薬用量などが確認されると、いよいよ薬としての製造販売承認を厚生労働省に申請します。

厚生労働省の諮問機関である薬事・食品衛生審議会の審査は厳しく、特に安全性については念入りにチェックされます。このため開発費用の半分が安全性試験に費やされるほどです。

新薬の候補物質を探す基礎研究から臨床試験(治験)への道

治験に関する法規を遵守

医薬品の開発は、抽出、化学合成、遺伝子組み換えなどの技術などで創られた多くの物質の中から、薬の候補を絞り込んでいきます。

新薬になりえると判断された多数のなかから、薬理作用を確認する試験管内の実験や疾病モデルや動物を用いた動物実験を繰り返し行うことで、作用が強そうなリード化合物(新薬の原型物)を選び出します。このプロセスをスクリーニングと言います。

このリード化合物の薬理作用を高めたり、毒性を弱めたりするために、科学的な修飾を行ってさらに多数の化合物を作成します。こうしたなかから、ほんの僅かな新薬候補を選び出すわけです。

新薬候補となる化合物は、人に投与する前の段階で、マウス、ラット、ウサギ、イヌなど、小動物から次第に大型動物を用いた実験を行います(非臨床試験)。未知の物質を人へ投与することは実験であってはなりませんが、病気で悩んでいる多くの患者さんを救うためには、効果と安全を人で確認することは欠かせません。

新薬候補を人へ投与するためには、GCP(医薬品の臨床試験の実施に関する基準)言われる手順を遵守して実施されなければなりません。製薬会社は国に治験実施計画書をと提出し、適正な治験であるか審査を受ける必要があります。

治験を請け負った医療機関、施設では、治験審査委員会(IRB)を設け、被験者(患者)に不利益がない妥当なものであるかを審査します。治験の開始にあたっては、被験者に対して「インフォームド・コンセント」すなわち十分な説明を行ったうえで、文書で同意を得て、被験者の人権や利益を守りながら行います。

重大な有害作用が発生した場合は、国に報告する必要があります。治験が実施計画書に沿って実施されているかどうかは、CRA(臨床開発モニター)の確認を受けます。CRAは、CRO(医薬品の開発業務受託機関)や依頼者である製薬会社などの監査を受けます。

このように人への投与は、倫理を重んじながら、GCPを遵守して、通常以下で紹介する3段階のフェーズ(相)に分けて、安全性を確認しながら段階を踏んで慎重に実施します。

薬の候補物質は三段階のフェーズを経て、安全性が確認されます

製造販売の承認申請までの道のり

まず、第T相試験(フェーズ1)では、計100人程度の健康な成人を対象に、候補物質をごく少量から順に、少しずつ量を増やして投与していきます。その後、被験者の血液や尿を採取して、投与された薬の候補物質がどのように吸収され、どんな具合に体内に広まり、どんな形に変化し、どのように排泄されるかといったことを調べます。同時にこれらのデータから安全性を検討します。

この段階では、候補物質の薬の効き目よりも、副作用を調べること、特に、重い副作用が起こらないかどうかに主眼が置かれます。仮に効き目があっても、それを上回る副作用が起こるようなら、薬としての開発を進めることができません。

安全性に対する注意が特に必要な段階なので、設備の整った医療施設で、経験をつんだ医師の監督下で慎重に行われます。

ここで安全性に問題がなさそうなことがわかれば、次は第U相試験(フェーズ2)です。この段階で初めて患者さんに対して使われます。比較的少人数の患者さんに対して、いくつかの使い方(投与量、投与間隔、投与期間など)を試しながら、効き目と副作用の両方を注意深く調べたうえで、最適と思われる使い方を決めていきます。プラセボ(有効成分が入っていない偽薬)との比較が行なわれることもあります。

ここをクリアすると、最終段階である第V相試験(フェーズ3)が行なわれます。通常100〜1000人以上の患者さんを対象に、この候補物質を薬として認めるのが適当かどうか、言い換えれば、既存の薬に比べて効き目が上回るとか副作用が少ないなどの、何らかの優れた特徴があるかどうかを調べることが目的です。

こうして三段階の相を全てクリアして初めて、製薬企業は、厚生労働省に対してその候補物質の薬としての製造や輸入の承認を求める申請を行なうことができます。そして、審査の結果、承認されてはじめて、新薬として世の中に登場できるのです。

やっと発売となった新薬ですが、今度は市販後調査が待っています。ここでは、市販前の臨床試験では得られなかった医薬品の有効性、安全性の情報など適正使用の情報が集められ、問題がある新薬は承認が取り消しになるものも出てきます。

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