治験のコスト削減と期間の短縮化が可能なアジア諸国へ進出する製薬企業が増加

日本の治験はコストが高い

1990年代以降、日本の製薬企業はアメリカやヨーロッパなどの主要先進国への進出によって、グローバル化を推し進めてきました。しかし、これらの主要先進国は、少子高齢化に伴う人口の現象とともに、医薬品市場が頭打ちになる日も遠くはありません。

そのような状況のなか、所得水準が右肩上がりで上昇し、人口も増加の一途を辿っているアジア諸国を次なるマーケットとしている日本の製薬企業も少なくありません。特にBRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国の頭文字を合わせた4カ国の総称)の一角を占める中国へは30社もの企業が進出しています。そのほかにも台湾へ18社、インドネシアに15社、韓国に12社、さらに同じくBRICsのインドへもエーザイなどの企業が進出しています。

中国への進出では、欧米の企業が日本に先行しており、中国市場における収益上位企業には、グラクソ・スミスクラインとヤンセン・ファーマという欧米企業2社が名を連ねています。

日本国内では治験を実施するために必要な患者数を確保することは難しく、また費用もかかるため、海外に比べると治験が進まない状況にあります。そこで近年はアジア諸国で治験を実施している企業が増えてきています。

製薬企業に代わって臨床試験の実施など、新薬の開発業務・製造販売後調査などを行うCRO(開発業務受託機関)の大手であるクインタイルズ・トランスナショナルの日本法人は、日本での申請を目的として、フェーズTを日本で行い、フェーズU・Vを中国、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシアなどのアジア諸国で実施することにより、治験期間の短縮とコストの削減を可能にしています。

そして、これらの治験結果の多くが欧米諸国や日本での申請資料として用いられており、日本での治験は空洞化しているのが現状です