製造販売後調査(PMS)で新薬の上市後も有効性と安全性を調べます

新たな副作用は厚生労働省へ報告

第V相臨床試験で有効性と安全性が確かめられ、無事に製造販売の承認を受けた医薬品は工場での生産を経て、新薬として市場に出てきます。

治験で得られたデータは、投薬方法や副作用に関する注意事項と一緒に、医療従事者に伝えられます。医師はその指示に従って処方するわけですが、治験はあくまでも限られた人数を対象とした試験です。

医薬品が治療現場で実際に使用されるようになると、様々な年齢・性別・体質の患者さんが、長期間・他の医薬品との併用など様々な条件下で服用することになります。そのため、データ数の少ない治験ではわからなかった効果や副作用を発生する可能性があります。

そこで行われるのが、新薬が発売され、実際の医療現場で使用されるようになった後に行われる「製造販売後調査(PMS)」です。この調査では、GPMSP(医薬品の製造販売後調査の基準)に基づいて、市販後半年間の情報を重点的に調査する「市販直後調査」、市販開始後5年ごとに幅広い層の患者さんについて品質・有効性・安全性を貯油さする「使用成績調査」、小児・高齢者・妊産婦・長期使用の患者さんなどについて調査する「特別調査」、そして必要に応じて「製造販売後臨床試験」を行うことになります。

この製造販売後臨床試験は、新薬の認可が一定の条件付きで降りた場合や生活習慣病の治療薬のように効果や副作用を長期間調べる必要がある場合などに行われます。用量・用法・効能の調査よりも、薬の飲みあわせを調べる「薬物相互作用試験」、使用後の死亡率や罹病率を調べる「安全性試験」などに重点が置かれます。

製造販売後調査の実施にあたっては、製薬企業のMR(医薬情報担当者)や学術部門が、調査対象の医師を選定し、定期的にフォローして調査データが記録された症例報告書を回収するなど、中心的な役割を果たしています。

このようにして得られた情報は、医薬品の改善点・副作用・相互作用・使用上の注意などの形で、医薬品を使用している医師や開発部門にフィードバックされるとともに、国に報告され、医薬品の再審査・再評価などの資料となります。

具体的には、製薬会社が市販開始後の6年以内に新薬の有効性・副作用などを調査報告して再審査を申請する「再審査制度」、国が再審査の5年後の新薬の妥当性を見直す「再評価制度」、そして製薬会社が新薬の使用によって発生した副作用や感染症の情報を国に報告する「副作用・感染症報告制度」などに役立てられることになります。

製造販売後調査で活躍する製薬企業のMR(医薬品情報担当者)

新薬の副作用等の情報を収集

MRとは製薬企業で働く医薬品情報担当者のことをいいます。MRの主な仕事は、担当している自社の医薬品について、対象となる疾患、用法、用量、副作用、新たに追加された適応症などを病院の医師や薬剤師に提供するとともに、その品質や有効性、安全性といった適性使用情報の収集を行います。

製薬企業では、MRを薬物治療のアドバイザーとして位置づけています。以前はプロパーと呼ばれており、自社製品を売り込む営業的な役割をしていましたが、1993年に現在のMR(医薬担当情報者)と名称が変更されてからは、その役割も大きく変わることになりました。

現在では、製薬卸のMS(医薬品卸の営業)が営業の役割を担っており、医薬品の適性使用の情報提供や副作用の情報収集は、製薬メーカーのMRが担当するという役割分担が出来上がっています。

薬事法では、市販された医薬品に副作用が発生した場合には、すぐに厚生労働省へ報告しなければならないと定められています。MRが医師から副作用の報告を受けた場合、直ちに会社に報告します。製薬会社の安全情報担当部門は、その報告を評価分析した上で、厚生労働省への報告を行います。

厳しい試験と審査を経て承認された医薬品でも、その効果や副作用の全てが明らかになってはいないので、市販後に何らかの予期せぬ副作用が発生することがあります。副作用は人命に関わる情報ですので、MRは副作用の正確な認識と迅速な行動が求められます。

MRは治験には直接関与しないものの、製造販売後調査(PMS)では大切な役割を果たしています。新薬の承認から原則として6年間は、その使用成績について調査を行い、再度、有効性と安全性を確認するという再審査制度があり、そのための調査が製薬会社に義務付けられています。この調査の実施するにあたり、医療機関に調査を依頼し、調査票を回収する作業をMRが担っているのです。