SMO(治験施設支援機関)はGCPに沿った治験の実施に向けて医療機関をサポート

医師や看護師、事務局の業務を補助します

被験者の安全と権利の保護、そして適正なデータを収集するため、治験はGCP(医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令)に沿って行う必要がありますが、実施機関である医療機関においては被験者のケア、書類の整備・管理や手続きなど多くの業務を行う必要があります。

1998年に試行された新GCPは従来の旧GCPに比べて、治験を行なう際の基準が大変厳しくなり、書類の整備・管理や、手続きが複雑になりました。その結果として、治験を国内ではなく海外でおこなうという「治験の空洞化」が問題になりました。

そこで誕生したのが、治験を実施する医療機関から、患者さんへの治験の目的と手順の説明、スケジュール管理、各種データの収集・管理などの業務を受託するSMO(治験施設支援機関)です。

それまでは治験を実施する医療機関に所属していた医師や看護師が行ってきた業務をSMOが支援することで、医療機関の負担を軽減させ、その結果として治験の迅速化と品質の向上につなげようというものです。

具体的には、治験開始前の業務フローの作成や症例管理のための資料作成にはじまり、医師や看護師をはじめとする関連部門との連絡・調整、被験者への同意説明や同意取得(インフォームドコンセント)の補助業務、来院日時の調整、服薬状況の確認、症例報告書作成、治験薬の副作用の報告などを行います。

また、新薬の開発に携わる製薬企業や医師から独立した第三者の観点から治験が科学的かつ倫理的に正しく実施できるかどうかを検討する「治験審査委員会」(IRB)の設立や運営、手順書(SOP)の作成、審査結果報告書の作成などの業務を補助することもSMOの大切な役割です。

これらの業務の多くはSMOから医療機関に派遣されるCRC(治験コーディネーター)が行いますが、CRCは医師や患者さんと接する機会も多く、看護師の経験や知識が活かせるため、CRCとして活躍されている方の多くは看護師からの転職組となっています。

SMOの費用は一般的に製薬会社の負担となりますので、治験を実施する医療機関の経済的負担はなく、治験の実施症例数に応じて研究費(一例あたり平均30万円)を受取ることが出来ます。

信頼性を確保したデータを得るためには、治験の実施に直接関与するSMOと、治験を依頼し、管理するCRO(開発業務受託機関)の独立性を確保するなど、客観的に信頼性が確保される体制を構築することが必要となります。このため、CROとして業務を実施していた企業がSMO事業を新たに開始する例も以前は見られましたが、現在はCROとSMOの独立性を保つために分社化が進んでいます。

国内の代表的なSMOにはシミックの子会社であるシミックヘルスケア・インスティテュートをはじめ、イーピー綜合クリニカルサポートなどがあり、多くは1980年代後半から1990年代に事業を開始した新しい会社です。

SMOの市場規模は全体で400億円とそれほど大きくありませんが、新薬の開発競争の激化によりその需要は年々増しており、年率10%以上の成長を見せています。

夜勤が必須の病棟勤務と異なり、基本的に日勤のみで勤務時間をコントロールでき、女性が多い業界のため、子育て支援の体制が整った企業が多いのが特徴です、女性が働きやすい環境として治験業界は近年注目されています。