海外で行なわれた治験のデータを活用し、新薬の早期承認を目指します

臨床試験のスピード化が目的

新薬の有効性と安全性を確かめる治験には、その薬の開発期間の半分ほどを占めるほど、多くの時間が必要となります。承認申請に必要なデータをうまく集められない場合は、10年以上の年月がかかることもあるといわれています。

しかし、「新薬の有効性、安全性を立証する科学的データは世界共通」というICH(新薬申請の国際規格)に基づき、日本人の治験データに、海外の治験データを代替することが認められるようになり、治験の迅速化が期待できるようになりました。

「ブリッジング試験」とは、海外で行なわれた治験のデータを活用し、国内での重複試験を避け、新薬を早期に承認取得することを目的に、海外での治験の成績が、日本の患者でも再現されることを確認するための試験のことです。

わかりやすくいうと、外国人における安全性や有効性などの治験データと日本人での治験データが、同じ傾向にあることを確認するための試験です。海外と日本における治験の「橋渡し」的な役割を担っているので、ブリッジング試験という名前がつきました。

海外のデータを基にした承認申請が可能なブリッジング試験が認められたことも理由となり、国内での治験が減少しています。時間がかかり、費用も高いという日本に比べ、海外には良好な治験環境が整っているため、日本のメーカーが治験を海外で先行して行なうケースが急増しているからです。

この試験を一躍有名にしたのは、世界的にも有効性が高く評価されているエーザイのアルツハイマー治療薬「アリセプト」です。厚生労働省はアリセプトの日本国内での販売を早めるため、初めて米国内での治験データを基に国内の承認申請を簡略化し、通常2年以上かかる審査をわずか1年ほどでスピード承認しました。

ファイザー製薬のED治療薬「バイアグラ」や大正製薬の発毛促進剤「リアップ」もブリッジング試験を経て承認されており、今後も増加すると考えられています。