「先発医薬品と同一」が普及を後押し AG(オーソライズド・ジェネリック)の一覧(2023年2月)

先発医薬品メーカーもAG市場へ参入

日本の国民医療費は右肩上がりで上昇を続けており、2022年度の総額は42兆9,665億円。そのうち医療機関で処方される薬剤費の総額は7兆4,987億円でした。

社会の高齢化、現役世代の減少と厳しい状況の中、国民医療費を抑制する最もシンプルな方法は、薬価の安いジェネリック医薬品(医薬品の特許が切れた後に他のメーカーが製造する後発品)の普及率を上げて薬剤費を下げることです。厚生労働省の「令和4年度 薬価改定の概要」によれば、変更可能な医薬品を全てジェネリック医薬品にすると年間約2兆円を節約できるとしています。

現在、数量ベースで見てみると医療機関で処方される医薬品の82.1%はジェネリック医薬品となっており(2022年3月)、30%に満たなかった2010年から約10年で市場浸透が大きく進みました。その牽引役となっているのがAG(オーソライズド・ジェネリック)と呼ばれる新しいタイプのジェネリック医薬品です。

従来のジェネリック医薬品は、先発医薬品と同じ有効成分を使い、その品質と効き目、安全性が先発医薬品と同等であることを国からお墨付きをもらって製造販売されています。しかし、原薬、添加物(凝固剤、色素、コーティング剤)、製造工程などは同一ではない場合もあるため、一部の医療関係者や患者さんには根強い抵抗感が残っていました。

一方、AG(オーソライズド・ジェネリック)は先発医薬品メーカーから特許の許諾を得て製造販売されるジェネリック医薬品のことです。先発医薬品メーカーが所有する「物質特許」「製法特許」「製剤特許」などの特許使用料を支払って製造するので、先発医薬品と同一の有効成分、添加物、製造法で製造することが可能なのです。

薬を処方する医師や服薬指導をする薬剤師、薬を服用する患者さんもAGが「先発医薬品と同一」である安心感は大きく、AGの普及は急速に進んでおり、その市場も拡大しています。第一三共エスファのロスバスタチン(先発医薬品名:クレストール)、あすか製薬カンデサルタン(同:ブロプレス)、キョーリン製薬のモンテルカスト(同:シングレア/キプレス)のように売り上げが100億円を超えるAGも登場しており、企業の業績を大きく左右する存在になりつつあります。

従来のジェネリック医薬品が、一部メーカーによる不適切な製造(詳細は→後発医薬品メーカーによるGMP違反)により医療関係者や患者さんの不信感と不安感を増幅させていることも、AG普及の追い風となっています。

ただし、全てのAGが「先発医薬品と同一」という訳ではなく、下の表の3つの内訳のように一部が異なるAGがあります。

  • AG1:先発医薬品と比較して原薬、添加物、製法、製造技術、工場の全てが同一
  • AG1:先発医薬品と比較して原薬、製法が同一。製造技術と工場は自社のものを使用
  • AG1:先発医薬品と比較して原薬が異なり、製造技術と工場は自社のものを使用

現状では医療機関で処方されるAGの大半が、全ての面において「先発医薬品と同一」のAG1となっていますので、あまり気にする必要はないかと思います。

AGの種類 先発医薬品との比較
有効成分 原薬 添加物 製法 製造技術 製造工場
AG1 同一 同一 同一 同一 同一 同一
AG2 同一 同一 同一 同一 異なる 異なる
AG3 同一 異なる 同一 同一 異なる 異なる

2023年2月時点で国内で承認されているAG(オーソライズド・ジェネリック)のリストは以下の通りです。

AG(オーソライズド・ジェネリック)の一覧
AGの製品名 先発医薬品名 AGの製造販売企業
アザシチジン注射用「シオエ」 ビダーザ シオエ製薬
アジルサルタン錠「武田テバ」 アジルバ 武田テバファーマ
アゾセミド錠「DSEP」 ダイアート 第一三共エスファ
アトルバスタチン「VTRS」 リピトール ヴィアトリス
アナストロゾール錠「DSEP」 アリミデックス 第一三共エスファ
アフリベルセプト硝子体内注射液 「バイエル」 アイリーア バイエル薬品販売
アムバロ配合錠「サンド」 エックスフォージ サンド
アムロジピン錠 / OD錠「ファイザー」 ノルバスク ヴィアトリス
イグラチモド錠「あゆみ」 ケアラム あゆみ製薬
イミダフェナシン錠 / OD錠「杏林」 ウリトス キョーリンリメディオ
イルアミクス配合錠HD / LD「DSPB」 アイミクス 住友ファーマプロモ
イルベサルタン錠100mg「DSPB」 アバプロ
エスワンタイホウ配合OD錠T20 / T25 ティーエスワン 岡山大鵬薬品
エゼチミブ錠「DSEP」 ゼチーア 第一三共エスファ
エソメプラゾールカプセル「ニプロ」 ネキシウム ニプロ
エルデカルシトールカプセル「トーワ」 エディロール 東和薬品
エレトリプタン錠「ファイザー」 レルパックス ヴィアトリス
エンタカポン錠「サンド」 コムタン サンド
オクトレオチド酢酸塩皮下注「サンド」 サンドスタチン
オロパタジン点眼液「サンド」 パタノール
オメガ-3脂肪酸エチル粒状カプセル「武田テバ」 ロトリガ 武田テバファーマ
オルメサルタンOD錠「DSEP」 オルメテック 第一三共エスファ
カデチア配合錠HD / LD「あすか」 エカード あすか製薬
カムシア配合錠HD / LD「あすか」 ユニシア
カルベジロール錠「DSEP」 アーチスト 第一三共エスファ
カンデサルタン錠「あすか」 ブロプレス あすか製薬
クラリスロマイシン錠 / ドライシロップ「大正」 クラリス トクホン
クロピドグレル錠「SANIK」 プラビックス 日医工
ゲフィチニブ錠「DSEP」 イレッサ 第一三共エスファ
ジエノゲスト錠 / OD錠「モチダ」 ディナゲスト 持田製薬販売
ジルムロ配合錠HD / LD「武田テバ」 ザクラス 武田テバファーマ
シロドシン錠 / OD錠「DSEP」 ユリーフ 第一三共エスファ
スマトリプタン錠「SPKK」 イミグラン サンド
セフジトレンピボキシル錠 / 小児用細粒「OK」 メイアクト 大蔵製薬
セレコキシブ錠「ファイザー」 セレコックス ヴィアトリス
ソリフェナシンコハク酸塩錠 / OD錠「日医工」 ベシケア 日医工
ゾレドロン酸点滴静注「サンド」 ゾメタ サンド
タダラフィル錠「シオエ」 ザルティア シオエ製薬
タモキシフェン錠「DSEP」 ノルバデックス 第一三共エスファ
炭酸リチウム錠100mg「大正」 リーマス 大正製薬
デフェラシロクス顆粒分包「サンド」 ジャドニュ サンド
デュタステリドカプセル「武田テバ」 アボルブ 武田テバファーマ
テラムロ配合錠AP / BP「DSEP」 ミカムロ 第一三共エスファ
テルチア配合錠AP / BP「DSEP」 ミコンビ
テルミサルタン錠「DSEP」 ミカルディス
ドキサゾシン錠「ファイザー」 カルデナリン ヴィアトリス
トスフロキサシントシル酸塩小児用細粒「明治」 オゼックス MeijiSeikaファルマ
トルバプタンOD錠「オーツカ」 サムスカ 大塚製薬工場
バラシクロビル錠 / 顆粒「SPKK」 バルトレックス サンド
バルサルタン錠「サンド」 ディオバン
バルヒディオ配合錠EX / MD「サンド」 コディオ
パロキセチン錠「SPKK」 パキシル
ピオグリタゾン錠「武田テバ」 アクトス 武田テバファーマ
ビカルタミド錠 / OD錠「DSEP カソデックス 第一三共エスファ
ビソプロロールフマル酸塩錠「DSEP」 メインテート
ピタバスタチンカルシウム錠 / OD錠「KOG」 リバロ テイカ製薬
ピルシカイニド塩酸塩カプセル「DSEP」 サンリズム 第一三共エスファ
フェキソフェナジン塩酸塩錠「SANIK」 アレグラ 日医工
フェブキソスタット錠「DSEP」 フェブリク 第一三共エスファ
プソフェキ配合錠「SANIK」 ディレグラ 日医工
フリウェル配合錠LD / ULD「あすか」 ルナベル あすか製薬
フルチカゾンフランカルボン酸エステル点鼻液「武田テバ」 アラミスト 武田テバファーマ
プレガバリンOD錠「ファイザー」 リリカ ヴィアトリス
ブロナンセリン散2%「DSPB」 ロナセン 住友ファーマプロモ
ベポタスチンベシル酸塩OD錠「タナベ」 タリオン ニプロESファーマ
ボグリボース錠 / OD錠「武田テバ」 ベイスン 武田テバファーマ
ホリナート錠「タイホウ」 ユーゼル 岡山大鵬薬品
メトホルミン塩酸塩錠 / OD錠「DSPB」 メトグルコ 住友ファーマプロモ
メマンチン塩酸塩錠 / OD錠 / ドライシロップ「DSEP」 メマリー 第一三共エスファ
モメタゾン点鼻液 噴霧用 ナゾネックス キョーリンリメディオ
モンテルカスト錠「KM」 キプレス / シングレア
ラメルテオン錠「武田テバ」 ロゼレム 武田テバファーマ
ランソプラゾールOD錠「武田テバ」 タケプロン
リバーロキサバン錠 / OD錠 / 細粒分包「バイエル」 イグザレルト バイエル薬品販売
リマプロストアルファデクス錠「日医工」 オパルモン 日医工
レトロゾール錠「サンド」 フェマーラ サンド
レバミピド錠「オーツカ」 ムコスタ 大塚製薬工場
レナリドミドカプセル「BMSH」 レブラミド ブリストル・マイヤーズ スクイブ販売
レボセチリジン塩酸塩錠「武田テバ」 ザイザル 武田テバファーマ
レボフロキサシン錠 / 細粒 / 点滴静注 / 点滴静注バッグ「DSEP」 クラビット 第一三共エスファ
ロスバスタチン錠 / OD錠「DSEP」 クレストール
ロレアス配合錠「SANIK」 コンプラビン 日医工
YDソリタ-T1号輸液 / T3号輸液 / T3号G輸液 ソリタ 陽進堂

AG(オーソライズド・ジェネリック)は先発医薬品の特許が切れていなくても、特許の許諾を得られれば製造販売が可能です。したがって、従来のジェネリック医薬品が既にシェアを確保している成熟した市場にAGを「後追い」で投入して巻き返しを図るだけでなく、先手を打って特許が切れる前にAGを投入することで他社がジェネリック医薬品を出す前に市場シェアを確保する、という防衛的な戦略をとる製薬企業もあります。

当然、先発医薬品の売上が落ちるリスクがありますが、いずれ来る特許切れで他社のジェネリック医薬品に市場シェアを奪われるなら、自社の関連会社からAGを出す(第一三共→第一三共エスファ、武田薬品工業→武田テバ、バイエル→バイエル薬品販売など)、あるいは他社に特許を許諾してロイヤリティ収入を選び一定の収益を確保する、という考え方です。

上のリストで社名が頻繁に出てくるのでお気づきかと思いますが、AG(オーソライズド・ジェネリック)の市場で強固な地位を築いているのが、第一三共エスファです。親会社である第一三共のアーチスト(高血圧治療薬)とサンリズム(不整脈治療薬)で市場参入した第一三共エスファは、他の先発医薬品メーカーからクレストールやミカルディスなどの大型製品のAGの権利を次々と獲得して事業を拡大しています。目標は2025年に薬価ベースで売上高1,000億円超え。

日本新薬はこれまで後発医薬品事業は手掛けていませんでしたが、自社製品のザルティア(排尿障害改善薬)のAGを子会社シオエ製薬から販売してAG市場へ参入しました。

武田テバファーマは、親会社である武田薬品工業の製品や他社製品を毎年1品目のペースでAGとして販売する方針を打ち出しています。そのほか国内で後発医薬品事業を展開している外資系のサンドもAGを成長ドライバーに位置づけており、今後もAGの市場は拡大し、製品の市場浸透が進むのは間違いないでしょう。